読書感想文「緑のなかで」(著:椰月美智子)

あらすじ

主人公は、橋に魅了された大学三年生の青木啓太。北海道の自然豊かな大学で土木工学を学んでいる。地元を離れ、少しづつ我が家のように感じ始めた緑旺寮で、友人達や家族との関わりを通して、心を成長させていく。

21歳。

二度と戻らない青春の最終章を全力で駆け抜けた、一人の青年の物語。

 

感想

この話のモデルとなった北海道大学は、自分にとって非常に思い入れのある大学です。なぜなら、自分はこの大学を志望していたからです。結局、不合格となり他の大学に進むことになったのですが、北大に入学していたらどうなっていたのか、今でも考えることがあります。都会の真ん中に位置する、「森」の如き広大で自然豊かな場所で学ぶことに憧れていました。

この話は、自分にとってあり得たかもしれない無数の人生の一つだと、勝手に感じながら読みました。主人公の家族、友人、先輩、後輩に対する様々な葛藤が、自分のことのように感じられました。

「あの頃の未来に立っているというのに、なにも変わっていない気がした。自分というものの正体もつかめず、未来はまだ遠かった。」

これは、この小説の中の一文です。僕が感じ続けている心の葛藤が、言葉になっています。まだ幼かった頃の自分が憧れていた20歳。それなのに、その憧れに一歩も近づけていない自分が情けなくて、悔しくて。やりたいことも、なりたい自分も分からなくなってしまって。

それでも、前を向いて生きていくしかないと、今は思っています。人それぞれに、それぞれの役割があると信じて。自分にも自分にしかない輝きがあると信じて。そんな能天気な自分の考えを、そっと後押ししてくれる作品でした。